山形発!長編ドキュメンタリー映画『湯の里ひじおり-学校のある最後の1年』は、山形県大蔵村肘折温泉の1年を記録しました。故郷、地域に暮らすことの愛おしさが伝わってきます。心が癒され、元気がでてくる映画です!!
渡辺監督がメルマガneoneoにつづる「『湯の里ひじおり―学校のある最後の1年』が出来るまで」。
最終回は、ドキュメンタリー映画はここで決まるといっても過言ではない、編集の過程と、先日迎えた東京上映についてつづられます。
ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジンneoneo
http://homepage2.nifty.com/negri-project/neoneo/
『湯の里ひじおり―学校のある最後の1年』が出来るまで(4-最終回)
渡辺 智史
●鍋島惇さんの編集術
映画『湯の里ひじおり―学校のある最後の1年』の撮影した映像は、最終的に100時間近くになっていました。編集者の鍋島惇さんが参加した際には、文化庁への最終提出期限までの時間は1ヶ月しかありませんでした。困難が予想されたのは、3月21日閉校式の撮影の前日と当日に最後の撮影をし、翌日1日で編集を終えて完パケして現像所に渡さなければ、文化庁に提出期限に間に合わないという強行のスケジュールでした。
鍋島さんに、私がすでに編集していたラッシュを3時間見てもらいました。その時は「なんか暗い印象が強いなあ。この編集を見る限りでは、肘折に行きたいという気持ちにはならないよ。」というコメントでした。この3時間ラッシュは、高齢化していく村の姿、地域に暮らす人々の不安が感じられる場面が多く、老いていく村の姿をどう描くかに終始していたことが原因だったと思います。さらに鍋島さんは「あなたが言っている、<再生>という部分は、人に勇気や希望を伝えるものではないだろうか。この編集は、そうはなっていないよ。」私がイメージしていた<老いと再生>という物語、その再生の部分がしっかりと描かれていないのだと気づかされました。さらに鍋島さんから「ドキュメンタリー映画が、商業映画と違って一般の人々が観てもらえるようにするには、相当工夫をしないとだめだよ!!」と渇が入りました。
最終回は、ドキュメンタリー映画はここで決まるといっても過言ではない、編集の過程と、先日迎えた東京上映についてつづられます。
ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジンneoneo
http://homepage2.nifty.com/negri-project/neoneo/
『湯の里ひじおり―学校のある最後の1年』が出来るまで(4-最終回)
渡辺 智史
●鍋島惇さんの編集術
映画『湯の里ひじおり―学校のある最後の1年』の撮影した映像は、最終的に100時間近くになっていました。編集者の鍋島惇さんが参加した際には、文化庁への最終提出期限までの時間は1ヶ月しかありませんでした。困難が予想されたのは、3月21日閉校式の撮影の前日と当日に最後の撮影をし、翌日1日で編集を終えて完パケして現像所に渡さなければ、文化庁に提出期限に間に合わないという強行のスケジュールでした。
鍋島さんに、私がすでに編集していたラッシュを3時間見てもらいました。その時は「なんか暗い印象が強いなあ。この編集を見る限りでは、肘折に行きたいという気持ちにはならないよ。」というコメントでした。この3時間ラッシュは、高齢化していく村の姿、地域に暮らす人々の不安が感じられる場面が多く、老いていく村の姿をどう描くかに終始していたことが原因だったと思います。さらに鍋島さんは「あなたが言っている、<再生>という部分は、人に勇気や希望を伝えるものではないだろうか。この編集は、そうはなっていないよ。」私がイメージしていた<老いと再生>という物語、その再生の部分がしっかりと描かれていないのだと気づかされました。さらに鍋島さんから「ドキュメンタリー映画が、商業映画と違って一般の人々が観てもらえるようにするには、相当工夫をしないとだめだよ!!」と渇が入りました。
ラッシュを観た後に、鍋島さんからいくつか構成の修正と追加の提案がありました。そのなかで、この映画の特徴を大きく変えたのは、実際の肘折小中学校の一年生をナレーターに起用したことでした。学校が閉校するという、部分を小学生の男の子の声で語り、湯治場や月山の民俗的な部分を大ベテランの伊藤惣一さんが語るという構成になったことで、肘折の歴史と、学校がある最後の一年の時間を重層的に構成することができました。鍋島さんがラッシュを観て直観的に男の子を起用しようと決めた即断力には、驚かされました。私が感じ取れなかった、この映画の可能性を開いてくれました。
編集作業では、鍋島さんがカットの並びを決め、私がPC編集のオペレーターとして、作業をしていくというやり方でした。記録した膨大な撮影素材から、登場人物の動きをどう選び出していくか、どうリズミカルに見せるのか鍋島さんの編集感覚には驚かされるばかりでした。鍋島さんが撮影素材をさーっと観ると、もうカットの並びをイメージしている。私はそのイメージに追いつこうと必死でした。
時間がないなかでの編集は、鍋島さんの素材を選び抜く優れた目によって助けられました。そして一つのシーンをどのように作り込むかというアイデアの豊富さにも驚きました。シーンのはじめと終わりを、どのカットにするか、次のシーンへどう橋渡しするのか。大胆なカットバック、インサートカット、音の先行によってリズミカルに見せていく方法を知りました。一つのシーンごとに、細かいカットを積み重ねて作り込む作業を通して、鍋島さんの編集の哲学を教わることができたことは大きな喜びでした。鍋島さんは、「ドキュメンタリー映画はカットを選び構成するから、編集の段階でシナリオを作っていくようなおもしろさがあるのだよ。」と言っていました。鍋島さんは、本当に楽しみながら編集されていて、それに導かれるように、この映画全体が明るく楽しい雰囲気に様変わりしていくのがわかりました。
3月はじめから、3週間近くかけて最後の撮影部分以外の編集を終えました。
この映画のラストシーンにあたる閉校式は、堀田泰寛カメラマンと私の2カメでの撮影という体制で臨み、久保田幸雄さんが録音でサポートしてくださいました。久保田さんの現場での落ち着いた雰囲気が、緊張した私の心を解きほぐしてくれました。最後の閉校式は、地域に帰ってきた若者達のブラスバンドの演奏と、人々の涙の笑顔、手拍子が鳴り響き、心が和む場面を撮ることができました。
閉校式の翌日に最後の編集、まさに画竜点睛なるかどうかという気持ちで臨みました。盛り上がった閉校式の編集を無事に終え、最後のラストシーンは空っぽの教室と廊下の映像によって、この村の学校が閉じたことを印象づけながら、男の子のナレーションで、ある希望を語り終えるという編集できっちりまとめることができました。その素朴な希望が地域の未来、希望を暗示させ春を迎えるという、さわやかなラストシーンに仕上がりました。
つい先日、7月23日から25日までの3日間、江東区文化センターにて3回上映して900人が来てくださいました。会場から出てくる観客の表情は、涙混じりの笑顔の方が大勢いらして、「肘折に行きたくなった!」と笑顔で声をかけてくださいました。「ああ、1年間かけて撮影してきた日々が、最後の仕上げの段階を経て、観客の心に響く形になったのだなあ。」と実感しました。小さな上映会だからこそ、観客の反応がダイレクトに伝わってきました。映画の企画から上映までしっかりと関わることで、映画が果たす役割を学ぶことができました。私にとって初監督作品は、
大ベテランの映画人の人々から、多くのことを教わり、支えてもらいながら完成までこぎ着けました。感謝のしようがないほど、大きな経験をさせてもらったと思っています。デジタルで誰しも映画が作れる時代だからこそ、今後も豊かな経験をもったスタッフの人と仕事をして、多くのことを学び吸収していきたいと思っています。(了)
今後の上映
●肘折温泉上映:肘折いでゆ館
8月19日(水)
●前橋上映:シネマまえばし(旧テアトル西友)前橋プラザ元気21・別館3F
8月21日(金) 18:00~
8月22日(土) 15:40~
8月23日(日) 15:30~
●鶴岡上映:8月29日(土)鶴岡市中央公民館
第1回 上映13:30~ 第2回 上映19:00~
●山形市のムービーオンにてこの秋上映が予定!
●川崎市アートセンター(新百合ヶ丘駅)この秋上映予定!
●来春1月、世田谷区玉川区民会館にて東京アンコール上映を予定!
※自主上映も募集しております。
上映等のお問合せ:03-3555-3987(肘折の映画を支援する会事務局)
予告編: http://www.youtube.com/watch?v=VtHPw_5ewyl
編集作業では、鍋島さんがカットの並びを決め、私がPC編集のオペレーターとして、作業をしていくというやり方でした。記録した膨大な撮影素材から、登場人物の動きをどう選び出していくか、どうリズミカルに見せるのか鍋島さんの編集感覚には驚かされるばかりでした。鍋島さんが撮影素材をさーっと観ると、もうカットの並びをイメージしている。私はそのイメージに追いつこうと必死でした。
時間がないなかでの編集は、鍋島さんの素材を選び抜く優れた目によって助けられました。そして一つのシーンをどのように作り込むかというアイデアの豊富さにも驚きました。シーンのはじめと終わりを、どのカットにするか、次のシーンへどう橋渡しするのか。大胆なカットバック、インサートカット、音の先行によってリズミカルに見せていく方法を知りました。一つのシーンごとに、細かいカットを積み重ねて作り込む作業を通して、鍋島さんの編集の哲学を教わることができたことは大きな喜びでした。鍋島さんは、「ドキュメンタリー映画はカットを選び構成するから、編集の段階でシナリオを作っていくようなおもしろさがあるのだよ。」と言っていました。鍋島さんは、本当に楽しみながら編集されていて、それに導かれるように、この映画全体が明るく楽しい雰囲気に様変わりしていくのがわかりました。
3月はじめから、3週間近くかけて最後の撮影部分以外の編集を終えました。
この映画のラストシーンにあたる閉校式は、堀田泰寛カメラマンと私の2カメでの撮影という体制で臨み、久保田幸雄さんが録音でサポートしてくださいました。久保田さんの現場での落ち着いた雰囲気が、緊張した私の心を解きほぐしてくれました。最後の閉校式は、地域に帰ってきた若者達のブラスバンドの演奏と、人々の涙の笑顔、手拍子が鳴り響き、心が和む場面を撮ることができました。
閉校式の翌日に最後の編集、まさに画竜点睛なるかどうかという気持ちで臨みました。盛り上がった閉校式の編集を無事に終え、最後のラストシーンは空っぽの教室と廊下の映像によって、この村の学校が閉じたことを印象づけながら、男の子のナレーションで、ある希望を語り終えるという編集できっちりまとめることができました。その素朴な希望が地域の未来、希望を暗示させ春を迎えるという、さわやかなラストシーンに仕上がりました。
つい先日、7月23日から25日までの3日間、江東区文化センターにて3回上映して900人が来てくださいました。会場から出てくる観客の表情は、涙混じりの笑顔の方が大勢いらして、「肘折に行きたくなった!」と笑顔で声をかけてくださいました。「ああ、1年間かけて撮影してきた日々が、最後の仕上げの段階を経て、観客の心に響く形になったのだなあ。」と実感しました。小さな上映会だからこそ、観客の反応がダイレクトに伝わってきました。映画の企画から上映までしっかりと関わることで、映画が果たす役割を学ぶことができました。私にとって初監督作品は、
大ベテランの映画人の人々から、多くのことを教わり、支えてもらいながら完成までこぎ着けました。感謝のしようがないほど、大きな経験をさせてもらったと思っています。デジタルで誰しも映画が作れる時代だからこそ、今後も豊かな経験をもったスタッフの人と仕事をして、多くのことを学び吸収していきたいと思っています。(了)
今後の上映
●肘折温泉上映:肘折いでゆ館
8月19日(水)
●前橋上映:シネマまえばし(旧テアトル西友)前橋プラザ元気21・別館3F
8月21日(金) 18:00~
8月22日(土) 15:40~
8月23日(日) 15:30~
●鶴岡上映:8月29日(土)鶴岡市中央公民館
第1回 上映13:30~ 第2回 上映19:00~
●山形市のムービーオンにてこの秋上映が予定!
●川崎市アートセンター(新百合ヶ丘駅)この秋上映予定!
●来春1月、世田谷区玉川区民会館にて東京アンコール上映を予定!
※自主上映も募集しております。
上映等のお問合せ:03-3555-3987(肘折の映画を支援する会事務局)
予告編: http://www.youtube.com/watch?v=VtHPw_5ewyl
PR
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
リンク
カテゴリー
上映日程
芸術と食欲と温泉の秋。つくば上映は2010年11月21日(日)筑波学院大学にて!
最新記事
(05/25)
(04/20)
(04/18)
(04/18)
(04/17)
(11/02)
(06/24)
(01/18)
(11/14)
(10/14)
プロフィール
HN:
肘折の映画を支援する会
性別:
非公開
ブログ内検索
アーカイブ
最古記事
(01/20)
(02/21)
(02/21)
(02/23)
(02/23)
(02/24)
(02/27)
(02/27)
(04/03)
(04/21)
アクセス解析
カウンター